元編集者が記す雑誌の作り方

元編集者が記す雑誌の作り方

約15年の間、多くの雑誌・書籍・廉価書籍・写真集を作ってきた私・岡本が、一般の方にも分かりやすいように「雑誌の作り方」を書いておこうと思い立ちました。

二流の学歴の上に、就職氷河期世代であった私は、あろうことか紙媒体に就職し長く働いてきました。もし、もっと正しい思考回路があったのならば、こんな斜陽産業に足を踏み入れなかったはずです。

20代にしては、なかなかの給料をもらっていた私。時代が進み、下がることはなかったけれど一向に額面が上がりません。なぜ、こんな報酬で24時間死ぬほどに働かなければならないのか、疑問は浮かべど忙しさに掻き消されていく毎日でした。今ではコンビニの雑誌コーナーを歩くだけで吐き気を催してしまうほど、まだ後遺症は残っています。

雑誌には正直言って未来は無いと思いますが、しかし書籍や写真集にはまだまだ夢があります。ミリオンセラーが出るような可能性が残されています。過去、私もカメラマンの八木澤高明さんの書籍を作った時、それが土門拳賞の候補に残ったことがあり、残念ながら受賞は逃しましたが、編集者人生においてこんな輝かしい経験は一生忘れることはないと思います。会社の応接室でみんなで酒を飲みながら連絡を待っている時間、とても幸福でした。

雑誌・書籍作りは本当に楽しいです。

いつも紙媒体を否定することばかり書いているので、あいつは出版の敵だと思われているかもしれませんが、私は「こんなに楽しい仕事は他にない」と思いながらずっと仕事をしてきたんです。インターネットに魂を売ったわけではありません。

私が出版業界に愛想を尽かしてしまったのは、「再販制度」と「取次制度」と「コンビニの舐めた態度」のためです。雑誌を売る人が割引をできない、取次によって歪んだ商売、出版社に交渉の余地がないコンビニ依存、これらが今の出版業界を狂わせていることは間違いありませんし、大手がおいしい汁を吸って立ち上がらないことに問題があります。

しかし、一方では、紙媒体は決して無くならないという考えも持っています。これは決して「哀愁」ではありません。やっぱりレコードの音が一番…というような、雑誌は手にとって読むものという考え方を主張したいわけではありません。

時代は変わっているんです。

きっと雑誌の存在価値は、あと数年で大きく変わるだろうと見ています。雑誌というメディアは、出版社のものではなくなり、個人が好きなときに発行できる言ってみればブログのような存在になっていくと思います。

例えば、個人が貴重な体験をブログやSNSやYouTubeにアップするのと同じように、「雑誌でも出しておくか」と気軽に作れて、気軽に売れるものに変化していくのだろうと思っています。雑誌や書籍や写真集は、一般の人が作って、一般の人が売るものになり、「出版社」という概念が先に無くなっていくものなのです。

偉そうに書いているけど、たぶん数年後には「なに、当たり前のことを仰々しく書いてんだ、このブログ?」と言われるようになるでしょう。

さて、そうなってくると、求められるのは「雑誌の作り方」です。プリントパックのような印刷会社が今後は多くのフォーマットを作るでしょうから、誰でも簡単に雑誌編集長にはなれます。なれますが、一応「売れるもの」を作ってきた雑誌編集のコツが必要となってきます。

あなたがどんな雑誌を作りたいのか、いくら値段を付けたいのかで実売数は全く変わってくるでしょう。

そんな時代が来た時のために、雑誌の作り方をインターネットという海の中に“遺して”おきたいと思うのです。

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